ココロのカケラ

あの子のいた軌跡

水曜日

年末は役所など仕事おさめにはいってしまう
まだすることは あるけれど いったんは家に戻らなければ…
下の子を預けっぱなしでは 義母さんにも負担が大きい


遺骨をタオルでくるんでチェックアウト
雪が降ってるのでつい濡れないよう背を丸める


「さあ、お父さんとお母さんの 新しいうちにいこうね。」


まだ引っ越してから 来たことがないから なんだか「帰ろうね」と言いたくても言えない
高速に乗ってほどなくして あの子のでた大学の近くを通る
この界隈で 学生時代を過ごしたのか…


ちっとも帰って来なかったから それなりに充実していたんだろうか…
もっと 話したかった でも できなかった
原因は わたしにある
頑張りきれなかった わたしが悪い


私達は きっと いびつで 歪んでいるのだろう
けれど 自分以外に なったことがないから それに気がつけなかった
失敗して 失って 今頃わかっても もうおそい
いや わたしは うすうす気がついていた でも 自信が無くなって 勇気が出なかった
だから 「きっとそのうちに…」などという まわりの人の言葉に依存した
なんとしてでも どうにかするべきだったのに
わたしは 逃げたんだ
だから あのこは 死んでしまった
一人ぼっちで 死んでしまった



夫がラジオを聴いている
あの子はドライブの時は DSばかりしてたから
前をむいていれば 以前とは変わらない風景
けれど ルームミラーに移りこむ あの子の影はもうない…

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